海の生き物のアセスメント その9

~まとめ~

そろそろこの連載をまとめましょう。第一回目で述べたように、海洋生物の新しいアセスメントの手法についてはわからないことだらけでした。

1. なにが問題なのか 

2. 対象種はなにか

3. どうやって調べるのか

4. 評価と予測をどうするか

これらについて、私なりの答えを提案してきました。

海洋開発で一番問題になりやすく影響範囲が広いのは、音です。他にもいろいろな影響要素はありますが、海洋開発でも利用でも音がでるのは避けられず、瞬時に広範囲まで届き、海洋生物が敏感で、生物影響の具体例が示されている点で、水中騒音が主要な問題なのは疑いありません。

対象種は、スナメリとネズミイルカという沿岸の小型鯨類を提案しました。これらの種は、海洋のいろいろな餌生物に依存して一定の範囲を泳ぎ回るアンブレラ種であり、生態系の指標生物に適していました。杭を海底に打って建設する着床式と呼ばれる洋上風力発電所の建設海域に生息地が重なっており、敏感な聴覚をもっています。環境アセスメントでは、指標種を決めて調べるのが効率的です。スナメリとネズミイルカは「海のクマタカ」といえましょう。

調べる方法として、陸上のアセスメントでは目視が主体ですが、海洋生物はそうはいきません。かわって、生物と騒音を同時かつ忍耐強く観察するのに、耳を澄ませてじっと録音するロボットが有効でした。スナメリとネズミイルカは幸いエコーロケーションと呼ばれる探査能力を使うため、頻繁に超音波を発しています。海洋のアセスメントでは音をきちんと記録すれば、騒音と指標生物の双方を記録できます。

評価方法は、しっかりした結論がでる標準的なものを採用しましょう。測った騒音が指標生物に影響を及ぼしたか否かを確認するには、工事の前と工事中と工事の後、および環境が似ている対照区で同じ時期の6つの調査区を比較しなければなりません。とくに事後のフォローアップが大切です。また、音波に関しては最大影響距離を見積もれます。そのためには、騒音源の音の大きさだけでなく背景雑音の計測が大事でした。

実際にアセスメントを行うには、調査計画が必要です。洋上風力発電所の環境アセスメントではこんな流れで書いてみてください。

1. 問題を特定する。水中騒音が主要な影響源

2. 対象生物を特定する。アンブレラ種が望ましい。たとえばスナメリやネズミイルカ

3. 観察手法を決める。耳を澄まして騒音と生き物を観察する受動的音響手法が有効

4. 調査期間と場所を決める。事前事後比較と対照区の設定が重要

えっ、そんな簡単にいわれても難しいですって。予算も人員も限られていますし、そもそもほんとうに具体的な実行計画に落とし込むにはまだ情報が不足していると言われそうです。すみません。水中生物音響のもう少し広めの解説であれば、手前味噌ですが「水中生物音響学」をご覧ください。これからも連載のフォローアップを続けていきますし、ご相談にものりますので遠慮なくご連絡ください。

この連載はこれでおしまいです

inserted by FC2 system